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「久しぶりだね」
「……用件は何ですか」
客に対して見せる笑みはなく、そこにあるのは無表情。
勇樹は父のパートナーであった、神孝弘と玄関先で顔を突き合わせていた。その右目は光を放たず、鈍く濁っている。
彼は母に何か用事があったらしく、自宅を訪問したのだが生憎、彼女はこの時不在であった。
「……こうして会うのは、六年ぶりか」
「俺は覚えていませんよ。六才の時の事なんて」
本当に覚えていないのかどうか、孝弘には見分けがつかない。わかるのは、彼が自分と口を聞きたくなさそうだという事だけ。
「それで、母に用ですか? 母は今、職場ですけど」
「……ああ」
そう言って、孝弘は、勇樹の後ろに見える居間を観察する。
六年前から変わらぬタンス、擦り切れた絨毯、穴の空いたカーテン……
生活が苦しいのは、一目でわかる。
だからこそ、孝弘はこうして月に一度、一線を退いてからも、百万を超える仕送りを続けているが……
それでも、この有り様……焼け石に水とはこの事。七億という借金の額は、大き過ぎる。
「母に用があるんでしたら、職場に行って下さい。こっちに帰ってくるのは、八時過ぎですよ」
孝弘は、そうか、とだけ言うとすまなさそうに背を向け、扉を閉めた。
閉められた扉を、勇樹は睨み続ける。
欲しかったのは、お金じゃない。
別に、貧しい生活でも良かった。
自分が欲しかったのは……!
その考えにいらつき、勇樹を舌打ちした。
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