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消灯し、誠二は持ち前の図太さから眠り、朱実は巨大なイビキをし、香はその繊細さから眠っている時間帯。
二ヵ月前なら、勇樹は絶対に睡眠不足に陥っていたこの状況。しかし、朱に交われば赤く染まるとは良く言ったもので、彼も速やかに眠れるようになっていた。
が、この日だけは違った。二段ベッドから音をたてぬよう降りると、寝巻きに上着を羽織り忍び足で歩き出す。ドアノブをゆっくりと回し、ドアを開け、再び閉める。
非常灯の光だけが通路を照らす中、勇樹は静か屋上に向かった。
夏とはいえ、夜は寒い。寝巻きに着込んだ上着を抱き締めつつ見上げた夜空は、お世辞にも澄んでいるとは言えず、星々の瞬きを目に収める事は出来ない。代わりに金網の向こうに見えるのは、ネオンの輝きと車のヘッドライトによる光の奔流。
「……自滅への道、まっしぐらだな」
肉体の能力そのものは、地球上で最弱の部類に入るであろう人類がここまで繁栄したのは、ひとえにその知恵だろう。
だが、その知恵が、今、自分達の生命を脅かしている。
電磁波共鳴体。一定の周波数と出力が揃う事で出現する怪異現象。
人々はそれに対し、様々な策を講じてきた。電磁波耐性素材の開発、共鳴体を処理する『インヴィテイション』の養成。この闇の彼方には、一般人には勿論、自分達にも秘匿されている電磁波中和装置がどこかに設置されているはずだ。
しかし。
電磁波そのものを駆逐、つまり『文明の退行』を選ぶ動きは無い。当然だ。社会という鎧なしで、現代人が生きていける訳が無い。
「俺達がちょっとばかし共鳴体を倒した所で、大した意味なんてねえだろうに」
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